ETV特集「失われた言葉をさがしてー辺見庸とある死刑因の対話」を観


庭に、ようやくチューリップの花が咲く。ようやく本格的な春を感じる。
前の日の深夜にビデオにとった、NHKETV特集「失われた言葉をさがしてー辺見庸とある死刑因の対話」を観る。作家辺見庸が、ある死刑因の句集を編むまでを、静かに語り続ける。途中から、東日本大震災に襲われた辺見の故郷も出てくる。辺見は、震災後言葉が出てこなくなり、何も書くことができないでいるという。ある死刑因とは、私と同じ故郷をもち、同じ青春時代を生きてきたひとである。多くの俳句が紹介されていたが、幾つかを書き留める。俳句は、その人が今生きている、あるいは生きてきた証として発した言葉でもある。作家辺見庸は、生きてきた自分と重ねる。そして、わたしもまたーーー

実存を賭(と)して手を擦る冬の蝿
まなうらの虹崩(くず)るる鳥曇(とりくもり)
蜘蛛一日(ひとし)出口探して見つけ得ず
暗闇の陰翳(いんけい)刻む初蛍
棺一基四顧(しこ)茫々と霞けり

棺一基 大道寺将司全句集

棺一基 大道寺将司全句集