『一寸』第58号、拝受

『一寸』第58号を同人のI氏より送っていただいた。直接お礼をしていないが、この場を借りて感謝申し上げたい。
今回も、読み応えのある内容。その一つ岩切信一郎氏の「装幀・近代文学を包む」がある。。明治大学図書館で開催された「本の装い百年ー近代日本文学にみる装幀表現展」での講演会の内容だが、そこに行くことが出来なかったので、とてもうれしい。岸田劉生の装幀に関しての語りのなかで伊上凡骨が出て来る。「劉生が描いた版下絵から伊上凡骨が彫り、たいていが凡骨の工房で摺られた」と。凡骨の工房は神田小川町にあったが、明治大学のすぐそばであり、不思議な縁を感じていた。

そんななかで、ここ数週間の間ヤフーのオークションに、サイン入り「名人木版画彫師伊上凡骨肉筆画帖」なるものが2度も出ていた。本物かどうかわからなかったが、500円からのスタートだったので1度目はその時点で入れてみた。入札してから、画像を色々検討してみたが、絵も下手で、なんといっても落款が木版師が作ったものとしては不出来、おまけに、落款に「凡骨」と感じることが出来ず、それ以上は入札しなかった。最終的には1万円を越えて落札されていた。それから1週間たって、また違う「伊上凡骨肉筆画帖」が出てきた。これは、入札しなかったが1500円ぐらいで落札されていた。まあ、伊上凡骨の作品として判断する人がいなかったのだろう。それにしても、堂々と希少「伊上凡骨肉筆画帖」と題してして出品している神経がわからない。
ちなみに、以前オークションに、伊上凡骨が描きさらに彫った与謝野寛・晶子の年賀状が出たことがあり、思い切って入札したが落札することが出来なかった(下の画像)。この時の落款は「凡骨刀」(石井柏亭「東京十二景」にも「凡骨刀」とある)。

それにしても「伊上凡骨肉筆画帖」にあるサイン「伊凡奴」とは誰か?中国名か。落款では、「伊」だけはわかるが、名人木版画彫師の作った落款印とおもえず別人のものと感じた。