「みちくさ市」御礼

少し遅くなりましたが、17日のみちくさ市、無事終了いたしました。天気が良く、暑いと思われる初夏の一日でしたが、来てくださった皆様、ありがとうございました。また、スタッフの皆さん大変お世話になりました。
今回は、同じ場所に出店した、とみきち屋さんには、特にお世話になりました。前にお会いしたとき、『本の雑誌』の「ブック・オフ特集」が近くの書店では手に入らず、読みたいと話していましたが、わざわざコピーをとってきてくれました。ありがとうございました。帰りの電車の中で全部読んでしまいましたが、今回みちくさ市に参加されなかった「書肆紅屋」さんの博識?に深く感動いたしました。
さて、今回の買物はとみきち屋さんの箱で買った、広津和郎『年月のあしおと』(講談社文芸文庫、上下巻)。この本、続の上下巻もあるのだが、なぜか、正続の下巻2冊をかなり前に手に入れているのだが、いずれも上巻を長い間見つけることが出来なかった。
改めて読み始めると、「泉鏡花と雨蛙」に中戸川吉二が出てきて驚いた。幼い日に広津和郎が見た泉鏡花の回想のなかである。里見トンの脚本「新樹」の祝賀会が芝の紅葉館で開催されたが、そのときに青年になった広津が鏡花と再会する。昔話をする二人の会話の横に中戸川がいて、
「愉快々々。われわれから見ると先輩なのに、泉先生にはまるで赤ん坊扱いだからな」と面白そうに囃し立てた。
と書いている。中戸川吉二年譜には「新樹」の祝賀会が、大正10年7月2日に行われたと書いたが、ここに広津も出席していたのだ(広津はこの一文のなかで、大正8,9年の頃と書いているが、間違いである)。それにしても、この本の親本である厚くて重い『年月のあしおと』が物置のダンボールに入ったままどこかにあるはずだが、広津が中戸川に触れていたの知らなかった。まあ、あまり中戸川を意識していなかったかなり前のことだったからと思う。