湯浅篤志『夢見る趣味の大正時代ー作家たちの散文風景』

湯浅篤志氏から、著書『夢見る趣味の大正時代ー作家たちの散文風景』(論創社)が贈られてきた。刊行おめでとうございます。早速読み始めたが、大正期、さかんにスキーをやっていたという「村井弦斎令嬢」黒田米子のことが、黒岩比佐子さんの『『食堂楽』の人 村井弦斎』を参考に詳しく書かれている。こんなこと初めて知った。またラジオにハマったという久米正雄は、大正14年3月9日に初めてラジオを買う。鎌倉に住んでいたので、近くに住む里見トンとその子どもたちや中戸川吉二らとラジオを聞こうとする。しかしラジオからなにも音が聞こえなかったとう。この久米のエッセーが載ったのは『女性』(大正14年5月号)という雑誌という。こんなことも初めて知った。久しぶりに「中戸川吉二」の名に接した。さすが博識の湯浅氏、大正時代の作家たちの「趣味」を通しての近代化を論じた読み物で、とても面白い。皆さんに勧めたい。