『作家の手ー野口富士夫随筆集』/ウェッジ文庫

昨日、妻が仕事を兼ねて少し遠くに出かけるというので、車で埼玉を北上し、途中で車を降りて、久しぶりに加須の「ブ」に寄る。古本屋や新古書店に寄って、ウエッジ文庫を見つけると買うことにしているのだが、『作家の手ー野口富士夫随筆集』を見つける。これは読んでいなかった。帰りの電車のなかで読み始めたが、最初の一文「作家の手」は里見トンのこと、『東京新聞』昭和43年4月11日夕刊が初出。ここに番町の里見宅で、「中戸川吉二さんが腎臓結石でなくなったと話されたあとで…」という一文がある。中戸川がなくなったのは、昭和17年11月19日だからこのころの話であろう、そのときの『東京朝日新聞』の訃報欄には「脳溢血」とあるのだが…、死因が違っている。野口富士夫の本は、結構見ていたつもりだが、こんな文章に初めて出会った。あと、野口富士夫が疎開で移り住んでいた隣町の埼玉県越谷のことが頻繁に出てくる。まだのどかだった風景が描かれているが、当時住んでいた近くには、いま越谷市立図書館があり、寄贈された整理中の野口の本を見たことがある。現在は「野口冨士男文庫」があり、野口のコーナーもある。

作家の手―野口冨士男随筆集 (ウェッジ文庫)

作家の手―野口冨士男随筆集 (ウェッジ文庫)

話は変わるが、ウェッジ文庫が廃刊になるという。作家の回顧録など良書を覆刻出版していたので楽しみにしていたのだが、残念でならない。