ある訃報

ある訃報が届いたのは、1月20日が過ぎたころである。

あれから2ヶ月近くが過ぎた。幾度となくお世話になったその人を想いだしていた。私の故郷釧路のジャズ喫茶ジス・イズの名物マスターといわれた小林東氏である。その後、釧路の知人が地元の氏を追悼したたくさんの新聞記事の写しを送ってくれた。
私が小林東氏と出会ったのは、そのジャズ喫茶ジス・イズが出来てすぐのころの高校生時代。店が家の近くで毎日のように通った。上京してからも、帰郷のたびに顔を出していた。私の青春そのものであった。後に地元出版社緑鯨社を立ち上げ、文学賞を受賞する著書を送り出した。新聞には、直木賞作家桜木紫乃のコメントも載っているが、彼女が無名時代に最初に出した詩集を彼が出版している。
手許に、札幌の紀伊国屋で買い求めた2009年春の雑誌『カイ』がある。そこにお元気だったマスターの写真もある。いまも毎日、その姿を眺めている。