ここ数ヶ月、ある論考を書いているのだが(なかなか進まない)、数日前に資料としてネットで買った本2冊が届いた。右『小判鮫』は、昭和24年淡路書房から出たもの。作者は脚本家であった八住利雄。これは三上於菟吉雪之丞変化』のパクリといわれるもの。読むと、ストリーは仇討ちものでほとんど同じ、名前まで似た人物が多数登場する。おまけに同じような表現も多数ある。もっと驚いたのは、この本、作者八住利雄とあるのに、実際に書いたのは後の映画監督成澤昌茂であると「あとがき」にある。戦後の混乱期には、このようなことがまかり通っていたのだろう。
右の本は、戦後に出た三上於菟吉雪之丞変化』(昭和24年、いちろ社)であるが、「続」とあり(於菟吉には『雪之丞変化』の続編「雪之丞後日」昭和14年)、期待して取り寄せたが、ただの上下巻に分けただけのものであった。この戦後の出版も、戦後の混乱期で無許可で刊行されたらしい。