高階良子のマンガ「挽歌」


10月20日は、私の講演が市立釧路図書館であったが、その日の「北海道新聞」に上記の記事が載っていた。全く知らなかったもので、私の『「挽歌」物語』のなかでは触れていない。講演で、この記事について触れたが、これから、数回『「挽歌」物語ー作家原田康子とその時代』/補遺として、いろいろ新しく出た資料について書いていく。今回はその1回目。

蘭の家 (ホラーMコミック文庫)

蘭の家 (ホラーMコミック文庫)

高階良子(たかしな りょうこ、1946年2月18日 - )が、1976年、「ヤングレディ」(号数不明)に掲載した原田康子原作「挽歌」が、ぶんか社から10月20日にでた『蘭の家』(ホラーMコミックス文庫)のなかに収録された。高階の70-80年代のオリジナル作品7話のなかの一つ。帯に“原田康子原作「挽歌」初コミックス化!”とある(収録されていたことは新聞記事で知ったのだが)。10月20日は、原田康子の命日でもある(偶然なのか意図的なのかは解らない)。
このコミック「挽歌」については全く知らなかったもので、拙書『「挽歌」物語』に触れていない。1976年といえば「挽歌」誕生から20年、主演秋吉久美子によって2回目の映画化された年である。この映画化を意識して描かれたものかも知れない。
脚色した池田悦子(いけだ えつこ、日本の漫画原作者)は、コミックの最後に“「挽歌」あとがき”を書き、コミックの脚色を書いたのはこの「挽歌」が最初であったという。「原田康子氏の「挽歌」は一世を風靡し、名作と評価が定まった小説である。覚悟以上に難行であったことを覚えている」とある。その後池田は、日本の漫画原作者として活躍している。最後に「「挽歌」は、あの時でなければ、二度と出会えない作品である。この仕事をしてよかった!」と書いている。
作者の高階良子の「あとがき」もある。20代の終わりごろ「ヤングレディ編集者から「挽歌」を描きませんか?」といわれて、本屋へ走り「挽歌」を買い本を読む。「面白かったというよりも、ヒロインの切ないほどの恋心が胸にずっしり伝わってきたのです。でも当時の私には、これは手に余ると思えました」。脚色の池田の手をかり、気力で描いた作品である。
コミックとしての「挽歌」は、「北海道 釧路」の霧のかかった風景からはじまる。知られざる、もうひとつの『「挽歌」物語』である。