岡和田晃編『北の想像力』

岡和田晃編『北の想像力』(寿郎社)。これも友人F氏が贈ってくれたものだが、寿郎社は札幌の出版社で、印刷・製本はF氏の会社が担っている。副題は「〈北海道文学〉と〈北海道SF〉をめぐる思索の旅」だが、大勢の人たちが、北海道文学、そして北海道のSF文学についての論考を寄せている。かつて盛んに「北海道文学」が論じられた時代があったが、近年閉塞感があり、その世界も低調だった。そしてこの『北の想像力』の出現は、新しい時代の始まりを感じさせる。なぜなら、北海道在住の人たち以上に、全国から若い書き手を中心に、北への深い想いをめぐらした論考を寄せているからだ。
編集後記(私は、本を読むときは、「はしがき」や「後記」から読み始めるのだが)に、編者の引用文だが次の言葉があった。

北海道へ行ったらぜひ乗ってみなければならないのが釧網本線である。ことに弟子屈ー釧路間の二時間はひたすら葦原と沼地の原野を走るのみーーあらためて北海道の広大さと異国性を感じさせてくれる。地平線の彼方から煙の柱が次第に浮かび上がってきて釧路の街が表れるあたり、異様さを通り越して感動的だ。

私が青春を送った風景である。いま私は、『北方人』に「釧路湿原文学史」を連載中であるが、私が書くきっかけとなった言葉でもある。『北の想像力』は、782ページの大書であるが、これからの北海道文学を論ずる上で、まちがいなくバイブルとなりうる一冊である。「朝日新聞」の北海道版などで書評がでたらしいが、地元の「北海道新聞」は、まだ本格的な論評を加えていないようだ。地元で、新しい北海道文学の論議を高めてくれたならと思う。

北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅

北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅