岡和田晃『向井豊昭の闘争』

友人F氏が、岡和田晃向井豊昭の闘争ー異種混交性(ハイブリディティ)の世界文学』(未来社)を贈ってくれた。作家向井豊昭(1933〜2008)について、私は『北海道文学事典』(勉誠出版)の「室蘭と胆振・日高地方の作家と文学」で僅かに触れたことがある。函館生まれの大切な作家であるが、いままで、こんなに詳しく書かれたことはなかった、目から鱗のでるような本である。

実は、向井豊昭が2001年に少数自費出版した『北海道文学を掘る』という本を持っている。これは北海道にいる詩人Y氏が、向井氏から贈られたものを、私の勉強のためにと送ってくれたものである。北海道文学史にも全く出てこない作家や同人誌について書いたものをまとめたもので、私自身全く知らなかったことが出てくる、貴重なものである。この本に、向井氏からY氏に宛てた手紙も入っていた。そこに、北海道を離れた自らを「逃亡者のくせにと言うべきか、逃亡者だからと言うべきなのか」と書いている部分がある。その意味を岡和田晃氏は『向井豊昭の闘争』のなかで触れている。「逃亡者」という言葉は、非常に重い。未来社からは『向井豊昭傑作集 飛ぶくしゃみ』(2014年1月)も出ているらしい。こんど入手して、ゆっくり味わいたい。