小松伸六ノート㉚ 井上靖と小松伸六(補遺)

井上靖『樓門 他七編』(角川文庫)の「解説」について

 

今年の2月25日に、「小松伸六ノート⑰ 井上靖と小松伸六」を書いたが、これもその補遺。(https://kozokotani.hatenadiary.org/entry/2021/02/25/130551

小松伸六が、昭和31年に角川文庫から出た井上靖の文庫『楼門』に解説を書いていることを知ったのは、曽根博義先生が、講談社文芸文庫井上靖わが母の記』などに書いた著書目録の「楼門(解=小松伸六)昭和31 角川文庫」(曽根博義編)という記述だが、この著著目録にはいくつかの間違いがある。曽根先生には生前大変親しくさせていただいたが、文芸評論家・小松伸六の仕事を追うようになる前に急逝され、詳しくお聞きできなかったのは残念。その間違いと思われる個所は次の通りである(傍線の箇所が正しい)。

・『戦国無策』上下 昭和30年 角川文庫(解=小松伸六)

 『戦国無策』上下 昭和33 角川文庫(解=小松伸六)

・『暗い平原』昭和48年 中公文庫(解=小松伸六)

 『暗い平原』昭和48年 中公文庫(解=奥野健男

さて、角川文庫の『楼門』小松伸六の「解説」を読みたくて、埼玉県の県立図書館などで探したが、所蔵している図書館が全くなく、長らく出あうことができなかった。私にとっては幻の「文庫」であった(昭和43年に集英社文庫、昭和57年に潮文庫として出ており、井上作品は読めるのだが)。そして、ようやく最近、それも偶然に入手することができた。

昭和31年12月発行だから、まだ文庫にカバーが付く時代ではなく、当然パラカバー、帯だけであったと思われる。入手できたのは、時代を経たシミだらけで、背文字は読めない1冊だが、私にとっては貴重な幻の文庫である。署名は、旧漢字の「樓門」(新漢字だと「楼門」)、そして「他七篇」として「早春の墓参」「鵯(ヒヨドリ)」「落葉松」「氷の下」「楼門」などの短篇が収録されている。奥付には、昭和31年12月25日初版発行とある。

小松伸六が、始めて文庫に「解説」を書いたのは、前の年の深田久弥『親友』(角川文庫)で、この年の昭和31年4月10日には、同じく深田久弥の『贋修道院 他二篇』(角川文庫*実は未見)で、3冊目の文庫「解説」である。井上靖の文庫「解説」は、全部で9冊確認しているが、これが記念すべき最初のものである。小松が、戦後金沢から高崎を経て東京に戻り立教大学のドイツ語教師として勤めた42歳の時である。小松は、この文庫に収録された短篇8作品について、次のように書いている。

「これらの小説のどこかの隅に、ばらばらの姿になって隠れている井上靖という作家がちゃんとみいだされるのではあるまいか。(中略)井上靖という作家の精神史を全體としてもとらえることができるのであるまいか。」

「早春の墓参」の解説のなかでは、井上靖か書いた伊豆の風景を長く引用し、「この短篇が實に的確な自然描寫が多いこと。即ち氏のデッサンがいかに正確であるかを實證してみたかった…」と書いている。この頃、東京に戻った小松は、幾度か会っていた井上靖とも親しく、伊豆にも一緒に旅行していたこともあり、小松の見た伊豆の風景であったからこそ、書けた「解説」であったろう。

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小松伸六ノート㉙ 源氏鶏太と小松伸六(補遺)

 源氏鶏太と小松伸六(補遺)

 

今年の2月14日に、「小松伸六ノート⑮ 源氏鶏太と小松伸六」(https://kozokotani.hatenadiary.org/entry/2021/02/14/164325)を書いたが、その後ご遺族からお借りした大量の切り抜きのなかに、未見であった、『源氏鶏太自選作品集』(全20巻、講談社、昭和48年5月~昭和49年12月)の「解説」の写しがあった。今回は補遺として、その「解説」の詳細に触れたい。なお、「小松伸六ノート」では『源氏鶏太自選集』と書いたが、正式には『源氏鶏太自選作品集』である。「月報」に作品集の「解説」を入れるのは珍しいが、小松は『伊藤整全集』の付録(月報とは書いていないが)にも「解説」書いている。さて、『源氏鶏太自選作品集』の「月報」に収録された小松伸六の巻別の「解説」の詳細は次のようになる。

 

・『源氏鶏太自選作品集』第3巻(1973年6月刊)

    月報2「坊ちゃん社員・天下泰平」(解説)

・『源氏鶏太自選作品集』第5巻(1973年9月刊)

    月報5「川は流れる・重役の椅子」(解説)

・『源氏鶏太自選作品集』第8巻(1973年8月刊)

    月報4「実は熟したり・愛しき哉」(解説)

・『源氏鶏太自選作品集』第9巻(1973年4月刊)

    月報1「天下を取る・意気に感ず」(解説)

・『源氏鶏太自選作品集』第11巻(1974年5月刊)

    月報13「女性自身・男と女の世の中」(解説)

・『源氏鶏太自選作品集』第12巻(1973年7月刊)

    月報3「堂堂たる人生・人事異動」(解説)

・『源氏鶏太自選作品集』第17巻(1973年10月刊)

   月報6「若い海・:ほか短篇」(解説)

・『源氏鶏太自選作品集』第20巻(1974年11月刊)

   月報19「鏡・優雅な欲望」(解説)

 

今回確認できた小松伸六の『源氏鶏太自選作品集』の「解説」は8編。いずれも収録作品についての詳しい「解説」だが、他の巻もあるかも知れない。

もう一つ、小松伸六の源氏鶏太文庫「解説」は、確認できただけでも20冊を数えるが、最近また1冊発見した。『東京一淋しい男』(昭和42年1月刊、角川文庫)である。小松の「解説」の中に、興味深い箇所があるので引用したい。書き始めは、こうである。「文学散歩のような仕事で、くもった初冬のある日、富山に行った。富山市は源氏さんの生れ故郷である。」そして、源氏の生家を探すが、空襲で焼けたあとの街並みが変わり、見つからなかったという。「文学散歩のような仕事」というのは、昭和42年『小説現代』2月号に載った「文学観光案内2 北陸篇」のことだろう。そして、こう記す。

「私事にわたるが、私は北海道生れだから、そう思われるかも知れないが、源氏さんは、北方乾燥型の北海道作家と多少、似ていることがあるのではないかと思う。そういえばいまの富山は北海道の町とよく似ている。わたしはこれを必ずしも冗談として書いているのではない。たとえば北海道作家にみられるフロンティア・スプリット(開拓者精神)といったものが源氏さんの文学にみえるからだ。」

この小松の指摘は、あたっている。富山も港町で、戦前戦後、北海道の漁港には富山の漁船が大挙してやってくる時代があった。彼らは、北海道の港町に富山の大工を呼び寄せて家を建て、富山と北海道を行き来して過ごしていた。小松は、そのフロンティア・スプリットを、源氏文学のなかに感じ取っていたのである。

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企画展「没後15年 文芸評論家・小松伸六の仕事」開催中

釧路文学館での、企画展「没後15年 文芸評論家・小松伸六の仕事」、コロナに負けず開催中です。7月31日からはじまり、10月24にまで。期間中、様々な関連イベントがあります。

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9月12日(日)は、郷土史家によるトークイベント「北大通の記憶を伝える」と題して、文学作品の舞台として登場する北大通について聞くことができます。チラシの写真中央に、小松伸六の生家「小松商店」が見えます。

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企画展/「没後15年 文芸評論家・小松伸六の仕事」が釧路文学館ではじまります

企画展/「没後15年 文芸評論家・小松伸六の仕事」が釧路文学館ではじまります。

釧路出身の文芸評論家・小松伸六について、同人雑誌との関わりや作家たちとの交流を中心に紹介されます。時節がら、企画展、イベント等が変更になる場合があります。お問い合わせは、釧路文学館まで(0154ー64-1940)。

日時:2021年7月31日(土)~10月24日(日)

場所:釧路文学館(釧路中央図書館 6F)

入場無料

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企画展に合わせて、様々なイベントが開催されます。

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8月1日(日)には、盛厚三の講演が開催されます。

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『没後15年  文芸評論家・小松伸六の仕事』刊行 

7月31日より3ヶ月間、評論家・小松伸六の生れた釧路の、釧路文学館で「没後15年 文芸評論家・小松伸六の仕事」展が開催されます。

その企画展に合わせて、同人誌「北方人」を刊行する北方文学研究会では、『没後15年 文芸評論家・小松伸六の仕事』を刊行しました。

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 目次

刊行にあたって……………………………………………………… 北方文学研究会 1

小松伸六アルバム………………………………………………………………………  4

エッセイ

小松先生のこと ひとつ、ふたつ……………………………… 志村 有弘 6

小松伸六さんのこと……………………………………………………… 池内 規行 11

論 考

ドイツ文学者としての小松伸六…………………………………… 大木 文雄 18

小松伸六にとっての井上靖………………………………………… 小田島 本有 29

不思議な縁ー小松伸六と富島健夫………………………………… 荒川 佳洋 38

小松伸六と同人雑誌評と直木賞…………………………………… 川口 則弘 44

文芸評論家・小松伸六覚書ー同人誌『赤門文學』の時代……………………盛 厚三 50

小松伸六書誌(単行本)…………………………………………………………………… 61

小松伸六論考再録

小松伸六 頌 ……………………………………………………………………今村 忠純 62 

エッセイ/私の大学……………………………………………………………今村 忠純 71

インタビュー

父のことなど…………………………………………… 野上 伸子・浜野 敦子 72

小松伸六年譜……………………………………………………………… 盛 厚三・編 76

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発行日:2021年7月20日

発 行:北方文学研究会/編集責任・盛 厚三

頒価:800円(税込)

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申し込みは、 Eメール kozo818kotani@yahoo.co.jp

 

小松伸六ノート㉘ 小松の文庫「解説」その2

直木賞作家藤原審爾黒岩重吾と小松伸六

直木賞受賞作家の文庫「解説」については、すでに川口松太郎源氏鶏太新田次郎城山三郎司馬遼太郎水上勉五木寛之渡辺淳一については触れたが、今回の作家は『罪な女』で第27回直木賞を受賞した藤原審爾と、昭和36年に『背徳のメス』で第42回直木賞を受賞した黒岩重吾の2人である。その小松の文庫「解説」についである。

 

藤原審爾((ふじわら しんじ、1921~1984

純文学から中間小説、そしてエンターティメントまで幅広く活躍した藤原の、小松の「文庫」は、下記の8冊ある。

藤原審爾『結婚までを』(1978年、集英社文庫

藤原審爾『黒幕』(1978年、角川文庫)

藤原審爾『秋津温泉』(1978年、集英社文庫

藤原審爾『おそい愛』(1978年、講談社文庫)

藤原審爾『死にたがる子』(1981年、新潮文庫)

藤原審爾『わが国女三割安』(1983年、徳間文庫)

藤原審爾『誰でも愛してあげる』(1983年、徳間文庫)

藤原審爾『私は、ヒモです』(1985年、徳間文庫)

やはり、第21回の直木賞候補になった『秋津温泉』の「解説」が興味をひく。小松がこの作品に出会ったのは金沢時代で「昭和二十三年当時、私は北陸の古都といわれる非戦災都市金沢にいて、これを読んだが、若い情熱のにじみ出た甘味のメルヘン「秋津温泉」に目を洗われる思いがした」と、そして「こんど集英社文庫に入ったのは、私には望外の喜びである」と書いている。また、『死にたがる子』は、子供の自殺をテーマにした小説だが、小松は、金沢時代に自殺した教え子の自殺を回想する。なお、小松の『私は、ヒモです』の「解説」で、この短篇集のなかにある「庭にひともとの白木蓮」の主人公が、山田洋次監督の「フーテンの寅さん」の原型であること始めて知った。なお山田洋次は、「藤原学校」と呼ばれる勉強会の一員であった。

 

黒岩重吾(くろいわ じゅうご、1924~2003)

社会派推理小説、風俗小説、古代史を題材にした歴史小説など数多くの作品を残した、黒岩重吾の小松の文庫「解説」は8冊を数える。

黒岩重吾象牙の穴』(1977年、新潮文庫

黒岩重吾『大いなる変身』(1977年、角川文庫)

黒岩重吾『女の熱帯』(1978年、角川文庫)

黒岩重吾『我が炎死なず』(1978年、講談社文庫)

黒岩重吾『西成十字架通り』(1979年、角川文庫)

黒岩重吾『愛の装飾』(1979年、講談社文庫)

黒岩重吾『背徳の伝道者』(1979年、中公文庫)

黒岩重吾『木枯しの女』(1982年、角川文庫)

小松が残した黒岩の文庫「解説」は、1960年から70年代の作品がほとんどである。やはり、直木賞受賞作『背徳のメス』の系譜に位置する『背徳の伝道者』の「解説」が気になる。最初に、「かりに〈光〉と〈影〉の作家があるとすれば、黒岩重吾は、もちろん後者のがわにいる作家だと思われる。少なくとも彼は〈光源の信仰者〉ではない。背徳の世界に生きる〈人間悪の伝道者〉である。彼はつねに〈闇〉の言葉で語る。」と、黒岩の文学を語る。黒岩は、この『背徳の伝道者』は、直木賞受賞から10年目に発表された4作の短篇が収められている。小松は最後に、「以上四篇とも〈作者不在〉の小説は一つもなく、自分の内部に秘められた力を探求している作品であることを読者は知ってほしい。」と書く。なお、かつて住んだ釜ヶ崎地下無の西成を舞台にした『西成十字架通り』(角川文庫)は、入手困難でいまだ未見、どのような小松の「解説、があるのか、興味深い。

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小松伸六ノート㉗  小松の文庫「解説」その1

―小松伸六文庫解説一覧― 

文芸評論家としての小松伸六の「文庫」解説は、確認できただけで、2021年6月現在、154冊を数える。一部、すでに紹介したものがあるが、その詳細は次のようになる。

【注】再版、改訂版の解説は、現在同名で刊行されているものには、他者に変わっている場合がある。また、再版の場合、上下巻に分かれているもの。なお、絶版が多いが、今もロングセラーとして刊行され、版を重ねているものもある。

阿久悠『家族の神話』(1984年、講談社文庫)

有馬頼義『四万人の目撃者』(1960年、角川文庫)

有吉佐和子香華』(1965年、新潮文庫

五木寛之『ソフィアの秋』(1972年、講談社文庫)

梅崎春生『つむじ風』(下巻、1970年、潮文庫

石坂洋次郎あじさいの歌』(1962年、新潮文庫

石坂洋次郎『河のほとりで』(1964年、角川文庫)

石坂洋次郎『金の糸・銀の糸』(1967年、角川文庫)

石坂洋次郎『風と樹と空と』(1968年、角川文庫)

石坂洋次郎『光る海』(1969年、新潮文庫

石坂洋次郎『陽のあたる坂道』(1971年、講談社文庫)

石坂洋次郎寒い朝 他四篇』(1973年、旺文社文庫

石坂洋次郎『花と果実』(1975年、講談社文庫)

石坂洋次郎『颱風とざくろ』(下巻、1979年、講談社文庫)

井上靖『楼門 他七篇』(1956年、角川文庫)

井上靖『戦国無頼』(1958年、角川文庫)

井上靖『真田軍記』(1958年、角川文庫)

井上靖春の嵐・通夜の客』(1959年、角川文庫)

井上靖しろばんば』(1969年、旺文社文庫

井上靖『夏草冬濤』(1970年、新潮文庫

井上靖『その人の名は言えない』(1975年、文春文庫)

井上靖『花壇』(1980年、角川文庫)

井上靖『北の海』(1980年 中公文庫)

遠藤周作『黒ん坊』(1973年、角川文庫)

遠藤周作楽天大将』(1978年、講談社文庫)

遠藤周作『協奏曲』(1979年、講談社文庫)

遠藤周作『口笛をふく時』(1979年、講談社文庫)

円地文子『私も燃えている』(1965年、角川文庫)

円地文子『女の繭』(1967年、角川文庫)

円地文子『鹿島綺譚』(1968年、角川文庫)

円地文子『雪燃え』(1980年、集英社文庫

円地文子『人形姉妹』(1982年、集英社文庫

円地文子『都の女』(1983年、集英社文庫

円地文子『離情』(1984年、集英社文庫

円地文子『男の銘柄』(1988年、集英社文庫

円地文子『私も燃えている』(1988年、集英社文庫

円地文子『焔の盗人』(1988年、集英社文庫

大江賢次『絶唱』(1981年、講談社文庫)

大佛次郎赤穂浪士』(下巻、1964年、新潮文庫

大佛次郎『帰郷』(1966年、旺文社文庫

落合恵子『夏草の女たち』(1987年、講談社文庫)

落合恵子『彼女と彼』(1990年、新潮文庫

川口松太郎『新吾十番勝負』(1965年、上巻、新潮文庫)

黒岩重吾象牙の穴』(1977年、新潮文庫

黒岩重吾『大いなる変身』(1977年、角川文庫)

黒岩重吾『女の熱帯』(1978年、角川文庫)

黒岩重吾『我が炎死なず』(1978年、講談社文庫)

黒岩重吾『西成十字架通り』(1979年、角川文庫)

黒岩重吾『愛の装飾』(1979年、講談社文庫)

黒岩重吾『背徳の伝道者』(1979年、中公文庫)

黒岩重吾『木枯しの女』(1982年、角川文庫)

源氏鶏太『家族の事情』(1963年、角川文庫)

源氏鶏太『夢を失わず』(1964年、新潮文庫

源氏鶏太『悲喜交々』(1964年、角川文庫)

源氏鶏太『御身』(1965年、新潮文庫

源氏鶏太『流れる雲』(下巻、1969年、角川文庫)

源氏鶏太『浮気の旅』(1970年、角川文庫)

源氏鶏太『口紅と鏡』(1972年、新潮文庫

源氏鶏太『掌の中の卵』(1973年、新潮文庫

源氏鶏太『歌なきものの歌』(1975年、新潮文庫

源氏鶏太『社長秘書になった女』(1976年、角川文庫)

源氏鶏太『女性自身』(1977年、角川文庫)

源氏鶏太『艶めいた海』(1978年、角川文庫)

源氏鶏太『時計台の文字盤』(1978年、新潮文庫)

源氏鶏太『優雅な欲望』(1978年、集英社文庫

源氏鶏太『ずこいきり』(1979年、新潮文庫

源氏鶏太『夫婦の設計』(1979年、角川文庫)

源氏鶏太『若い海』(1980年、新潮文庫

源氏鶏太『湖畔の人』(1981年、新潮文庫

源氏鶏太『英語屋さん』(1983年、集英社文庫

源氏鶏太『奥様多忙』(1985年、講談社文庫)

幸田文『闘』(1984年、新潮文庫

近藤冨枝『本郷菊富士ホテル』(1983年、中公文庫)

笹沢左保『木枯しは三度吹く 木枯し紋次郎』(1983年/時代小説文庫/富士見書房

柴田錬三郎『剣は知っていた』(下巻、1955年改版、新潮文庫

子母沢寛『おとこ鷹』(下巻、1964年、新潮文庫

子母沢寛新選組始末記』(1969年、角川文庫)

子母沢寛新選組始末記 決定版』(1982年、時代小説文庫・富士見書房

広瀬仁紀『乱世の知恵者』(1988年、時代小説文庫・富見書房)

城山三郎『総会屋錦城』(1963年、新潮文庫)

城山三郎『風雲に乗る』(1972年、角川文庫)

城山三郎一発屋大六』(1973年、角川文庫)

城山三郎『イチかバチか』(1973年、角川文庫)、

城山三郎大義の末』(1975年、角川文庫)

城山三郎『鼠/鈴木商店焼打ち事件』(1975年、文春文庫)

城山三郎『価格破壊』(1975年、角川文庫)

杉森久英『天才と狂気の間』(1969年、角川文庫)

杉森久英『アラビア太郎』(1981年、集英社文庫

杉森久英『苦悩の旗手 太宰治』(1972年、角川文庫)

杉森久英天皇の料理番』(1982年、集英社文庫

杉森久英『苦悩の旗手 太宰治』(1983年、河出文庫

杉本苑子『華の碑文 世阿弥元清』(1977年、文春文庫)

曽野綾子『二十一歳の父』(1974年、新潮文庫

武田泰淳『愛と誓ひ 他四篇』(1957年、角川文庫)

壷井栄二十四の瞳』(1973年、新潮文庫

*解説「壺井栄 人と作品」「『二十四の瞳』について」

津村節子『娼婦たちの暦』(1988年、講談社文庫)

島健夫『おさな妻』(1979年、集英社コバルト文庫

豊田譲『撃墜 太平洋航空戦記』(1979年、集英社文庫

永井竜男『噴水』(1960年、角川文庫)

新田次郎『縦走路』(1962年、新潮文庫

新田次郎『強力伝・孤島』(1965年、新潮文庫

新田次郎昭和新山』(1977年、文春文庫)

新田次郎『先導者・赤い雪崩』(1977年、新潮文庫

新田次郎『ある町の高い煙突』(1978年、文春文庫)

新田次郎『怒濤の中に』(1979年、文春文庫)

新田次郎『氷原/非情のブリザード』(1979年、新潮文庫

新田次郎『雪の炎』(1980年、文春文庫)

林芙美子『稲妻』(1957年、角川文庫)

林芙美子うず潮』(1964年、新潮文庫

半村良『夢の底から来た男』(1982年、角川文庫)

平岩弓枝『おんなみち』(上中下巻、1981年、講談社文庫)

平岩弓枝『日本のおんな』(1982年、新潮文庫)

深田久弥『親友』(1955年、角川文庫)

深田久弥『贋修道院 他二篇』(1956年、角川文庫)

藤本義一『贋芸人抄』(1976年、角川文庫)

藤本義一『鬼の詩』(1976年、講談社文庫)

藤原審爾『結婚までを』(1978年、集英社文庫

藤原審爾『黒幕』(1978年、角川文庫)

藤原審爾『秋津温泉』(1978年、集英社文庫

藤原審爾『おそい愛』(1978年、講談社文庫)

藤原審爾『死にたがる子』(1981年、新潮文庫)

藤原審爾『わが国女三割安』(1983年、徳間文庫)

藤原審爾『誰でも愛してあげる』(1983年、徳間文庫)

藤原審爾『私は、ヒモです』(1985年、徳間文庫)

船山馨『お登勢』(1970年、角川文庫)

船山馨『石狩平野』(下巻、1971年、新潮文庫

船山馨『幕末の暗殺者』(1971年、角川文庫)

船山馨『続・お登勢』(1977年、角川文庫)

船山馨『見知らぬ橋』(下巻、1979年、角川文庫)

松本清張『無宿人別帳』(1960年、角川文庫)

松本清張佐渡流人行』(1963年、角川文庫)

松本清張『黒い福音』(1966年、角川文庫)

松本清張わるいやつら』(下巻、1966年、新潮文庫

松本清張『歪んだ複写』(1966年、新潮文庫

松本清張砂の器』(下巻、1973年、新潮文庫

松本清張『内海の輪』 (1974年、角川文庫)

松本清張『聞かなかった場所』(1975年、角川文庫)

松本清張『混声の森』(下巻、1978年、角川文庫)

水上勉『銀の庭』(1966年、角川文庫)

水上勉『湖笛』(1968年、角川文庫)

水上勉有明物語』(1970年、角川文庫)

水上勉西陣の女』(1972年、新潮文庫

水上勉『北国の女の物語』(上巻、1975年、講談社文庫)

水上勉『風を見た人』(第五巻、1976年、講談社文庫)

水上勉『流れ公方記』(1977年、集英社文庫

宮尾登美子『一弦の琴』(1982年、講談社文庫)

素九鬼子『旅の重さ』(1977年、角川文庫)

山崎豊子女系家族』(1966年、新潮文庫

吉行淳之介『娼婦の部屋・不意の出来事』(1966年、新潮文庫)

渡辺淳一『死化粧』(1971年、角川文庫)

渡辺淳一『光と影』(1975年、文春文庫)

渡辺淳一『阿寒に果つ』(1975年、文春文庫)

渡辺淳一『白き手の報復』(1975年、中公文庫)

渡辺淳一『恐怖はゆるやかに』(1977年、角川文庫)

 

また、小松伸六の作家別「解説」ベストテンをあげると次のようになる。

1位 源氏鶏太 20冊

2位 円地文子 10冊

3位 石坂洋次郎 9冊

3位 井上靖  9冊

3位 松本清張 9冊

6位 黒岩重吾 8冊

6位 新田次郎 8冊

6位 藤原審爾 8冊

9位 城山三郎 7冊

9位 水上勉 7冊

11位は、杉森久英、船山馨、渡辺淳一の5冊である。

さて、芥川賞作家の文庫に寄せた小松の「解説」は、第22回の受賞者井上靖をはじめ、松本清張遠藤周作吉行淳之介ら5人である。それに対して、直木賞作家は、第1回の川口松太郎をはじめ、21人に及ぶ。直木賞作家が多い理由は、それだけ大衆に受け入れられる作品を残した作家が多いからであり、大衆小説、中間小説に対して、文学的評価を与え続けてきた小松伸六のなしえた仕事であったろう。

そして、直木賞受賞作の、小松の「解説」は、6冊確認できる。

第25回の源氏鶏太『英語屋さん』(集英社文庫

第34回の新田次郎『強力伝・孤島』(新潮文庫

第47回の杉森久英『天才と狂気の間』(角川文庫)

第63回の渡辺淳一『光と影』(文春文庫)

第71回の藤本義一『鬼の詩』(講談社文庫)

第80回の宮尾登美子『一弦の琴』(講談社文庫)

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直木賞候補となった作品もある。第27回の藤原審爾『秋津温泉』(集英社文庫)を確認できる。なお、芥川賞受賞の文庫「解説」は確認できないが、候補になった作品の「解説」は、第54回の渡辺淳一『死化粧』(角川文庫)を確認できる。

次回から、いくつかの小松の文庫「解説」の内容に踏み込んでみたい。