小松伸六ノート㉛ 『文芸評論家・小松伸六の仕事』 補遺その2

現在釧路文学館で「鳥居省三と北海文学」展が開催されているが、帰釧して釧路出身の文芸評論家小松伸六の一文が、『北海文学』42号(昭和40[1965]年9月号)の「鳥居省三・特集号」に載っていたことをはじめて知った。『文芸評論家・小松伸六の仕事』(北方文学研究会・編)の年譜から完全に洩れている。

鳥居省三が『釧路文学運動史(明治大正篇)』(釧路叢書)を刊行したのは、昭和39年6月であるが、その著に対する書評の特集である。寄稿者は、小松の他に瀬沼茂樹、北海道の和田謹吾、佐藤喜一、武井静夫など当時の文学研究者が名を連ねている。

小松の一文は、『朝日新聞』昭和39年8月24日の「えつらん室」からの転載である。ご遺族から、大量の新聞の切り抜きを預かっていたが、その中にはなく、「えつらん室」といコラムに書いていたとは知らなかった。

小松は、「郷土史の本ならば、全国各地に出ているが、ある地域に限定した地方文学史の著書は、皆無でといっていいからである」といい、「大変な労作である」と評している。そして最後に「「昭和篇」も期待したい」と書いているが、その「昭和篇」が出たのは5年後の昭和44年1月のことであった。