「追悼・黒岩比佐子さんDVD上映会」へ行く

22日、神田の東京堂書店で行われた「追悼・黒岩比佐子さんDVD上映会」へ行く。昨年10月16日に開催された「社会主義者堺利彦の文才と「売文社」」の講演をDVDとして上映するもの。10月には都合で行くことの出来なかった、黒岩さんが亡くなったのはその僅か1ヵ月後の11月17日のことだった。葬儀にもいけなかったので、私にとってはこの日が黒岩さんとの最後のお別れ。岡崎武志氏の黒岩さんとの出会いの話からはじまり、自分もはじめてお会いした日のこと、その後のことも色々思い出す。DVDでは、遺作となった『パンとペンー社会主義者堺利彦と「売文社」』の刊行のエピソードを1時間以上も熱く語っている。誰もこの1ヵ月後に亡くなると思わなかったろう。最後に、言葉につまりながら、あと2人のことを書きたいという姿に、なぜか熱いものがこみ上げてくる。この日が、私にとって本当の意味での別れの日になった気がする。それにしても、あと2人とは誰だろう。きっと、その残された仕事の意思をついで書いてくれる若いひとが現れるに違いない。
この「DVD上映会」のあと、同じ会場で長山靖生と北原尚彦の対談『横田順彌と奇想小説の世界』があるのだが、これは最初からパス(長山氏と久しぶりに会いたかったが)して、東京古書会館の2階で開催されている「横田順彌『近代日本奇想小説史』資料展」に行く。古い『冒険世界』などの雑誌が興味をそそる。地下の古書市にも行く。久々なので大量の本の数になぜかまともに見ることができない。なんとか、伊吹ふみ子『古本屋日記・老残随想』(三茶書房)という本を1冊見つけて買う。世田谷の有名な、あの三茶書房で働いていた人の本らしい。頒価1500円とあるが、一般では売られなかったようである。
実はもうひとつ、会場へ向かう途中、久しぶりなので北千住で下車して「ブ」に寄る。棚のなかに祖田浩一『鬼瓦』という函入りの本があるのを発見。祖田は、伊上凡骨の評伝『匠の肖像』を書いた人である。手にとり、目次を見て驚く。「彫師・伊上凡骨の調べをめぐって」という一文がある。凡骨の遺族を探し出し会おうとしたが、かなうことが出来なかったという。また、『匠の肖像』は『徳島新聞』に「彫師・凡骨」として連載した評伝小説であることも知る。この俳句、短歌そしてエッセーをまとめ、最後に長い年譜を記した本は、2003年に紅書房から出ているが、アマゾンにもなく自費出版のようである。祖田氏が亡くなったのはこの2年後である。これから出る『木版彫刻師・伊上凡骨』は初校が終わったばかりだが、まだ、参考資料として書き加えることも出来る。これも、故祖田浩一が、こんな本を出しているよと、私にあわせてくれたのかもしれない。