小谷野敦氏の『猿之助三代』を読む

私の「フリッツ・ルンプ物語」は中断したままであるが、いずれ再開する予定でいる。小谷野敦氏が『猿之助三代』を刊行したとのことで、早速入手する。

猿之助三代 (幻冬舎新書)

猿之助三代 (幻冬舎新書)

実は、市川猿之助がフリッツ・ルンプに宛てた手紙が『Du verstehst unsere Herzen gut(ルンプ図録)』(ベルリン日独センター刊、1989年)に写真版として載っている。歌舞伎の世界は良くわからず、何代目の猿之助かも知らなかった。『猿之助三代』を読むと2代目である。手紙は、1919(大正8)年3月3日の消印らしい。ルンプ伍長様とあるから、習志野俘虜収容所に宛てたものと思われ、渡欧を伝える内容で「三月中旬横浜出航」とある。『猿之助三代』によれば、猿之助は3月15日、横浜からアメリカに向けて出港している。
問題は、猿之助とルンプがどこで知り合ったかである。私は、「パンの会」で出会ったと思っているのだが、二代目猿之助が「パンの会」と関係があったとは『猿之助三代』に出てこない。ますます謎は深まるばかり。