もう10月も終わり

いろいろやらなければならないことが多いのだが、遅々として進まず、少しあせっている。
そんななか、荷風歡樂/閑話休題荷風○人さんの日記〜http://rossana.cocolog-nifty.com/earima/2013/10/post-71d9.htmlに、『中戸川吉二作品集』(勉誠出版)を読んだ感想が出ており、引用しておく。このように作品集を読んでくれる方がいてうれしくなる。少し、気を引き締めて仕事にかかりたい。

中戸川吉二作品集』(志村有弘盛厚三編 勉誠出版 2013年)読んだ。
これはこの前読んだ『林芙美子放浪記復元版』よりもごいつ本です(~_~)
平成17年に『新潮創刊100周年・通巻1200号記念 名短編』で中戸川の「寝押」を読んで、私的には他の並み居る文豪の作品を押しのけこの「寝押」が一番印象に残って、他の作品も読みたいと思っていたころだったので、この勉誠出版の刊行は画期的でもあったのです。それよりも遡ること1987年に出た「忘れられた作家・忘れられた本」(山下武 松籟社)のあとがきに中戸川吉二『北村十吉』も取り上げられていて、ずっと気になっていた作家であったが、古本をネットで探しても高額の値段がついていることが多く一般人には入手しづらく、代表作の「イボタの蟲」以外は読む機会がなくかった。今回、近代デジタルライブラリーにも作品が収録されていることを知りあわせて読みました。長年読みたいと思い続けていた長編小説「反射する心」が読めたのが一番の収穫でした。

中戸川吉二作品集』より
兄弟とピストル泥棒
犬に顔なめられる
イボタの蟲
法要に行く身
わかれ
アツプルパイ、ワン

二夫婦半
寝押
自嘲
縁なき衆生

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近代デジタルライブラリーより
金を受取る話
島で遭つた画家
喧嘩
三つの写真
放蕩児
嫉妬
童貞
反射する心

通して読んでみて今でも古臭いという感じはなくおもしろく読めます。多分私が大正時代の小説やその頃の私小説のファンであるからそう思うのでしょうが、今の若い子が読んだらどう感じるのかというのは気になるところです。中戸川の活動は大正8年から11年頃までの数年で残した創作はわずか30数編に過ぎないという。私が今回読んだ作品も自叙伝的ないわゆる「私小説」であり、割と若くして作家として名を成したはいいけど、自分が経験してきた話しのネタや題材を書き尽くしてしまい、里見とんとの絶交の原因となった熱烈な恋愛の末にめでたく結婚して家庭におさまってしまったとたんに創作の意欲を失ってしまったというのは、わかりやすいというか中戸川にとっては不幸であった。久米や菊池・小島が純文学だけでなく通俗小説も書けたということからすると、そこが才能の違いだったのかという気もするが、親の事業を引き継いで小説を書かなくともお金には苦労しなかったということもあるのでしょうね。中戸川吉二と妻となった富枝さんの写真が二枚巻頭に掲載されています。富枝さんすごい美人です。いや、よくみると不良少年、不良少女の面影が残っている…(笑)。「反射する心」のヒロイン・お夏さんはどんな方だったのか見たかったが残念ながら写真はなしです。別の写真の田中純NHK連続テレビ小説ごちそうさん」に登場する文士・室井幸斎にだぶって仕方がない(汗)。しかし、つくづく思うに大正時代というのは、のんびりとしたいい時代だったのだなあと羨まずにはいられない。友人とのこと、家族の話、文学へかける思い、恋の話し・・・。私小説でありながらもほのぼのとした青春小説でもある。当時の小説には必ず芸者、待合だとか花柳界の話しが出てくる。里見とんの小説なんかは特に顕著で徹底して遊んでいるなあと感心せずにはいられないのですが、中戸川も使う「放蕩」というのは現代だったらどういうことになるのでしょうか。風俗遊びに狂うとか??そうすると一時期の私も「放蕩」と呼べる状態だったのかしらと考えこんでしまうのですが…。あっ!話しがそれてしまった(;´Д`)
いまだに読めていない幻の作品『北村十吉』どこかで読めないなかなぁ(;ω;)